認知症のふしがある父の代わりにアパート経営を代行する場合(賃貸借契約)

アパート・マンションなどの不動産経営者が、事後の取り決めもなく認知症になってしまうことほど、やっかいなことはありません。家族は契約行為である賃貸契約などには、手を出せず、まさにお手上げ状態。このようになる前に、効果的な認証対策はあるのでしょうか。

物忘れが多くなった父の代わりにアパート経営を代行する相談を例に、認知症対策についてみていきましょう。

相談ケースの説明

認知症に関する相談ケース2-1

相談者は、80代の父親をもつ60代の男性。父親は2棟のアパートを所有・管理しているが、ここのところ物忘れがひどくなり、認知症の傾向が。50代の妹とともに、入居者の賃貸借契約書の代筆をするなどしているが、今後、認知症が悪化することが考えられるのので、その前にしておくべきことはないか。

また、このまま父が認知症になるとどんなリスクがあるのかも知りたい。

解決策

認知症対策に効果的な家族信託

認知症に関する相談ケース2-2

認知症により十分な判断能力がなくなる前に、家族信託をしておくことがもっとも有効な解決策です。物件が2棟あるのであれば、1棟を長男、もう1棟を長女を受託者として家族信託をしておけば、将来的にオーナー業をスムースに引き継ぐことができます。父親が元気なうち/は、協力してアパートを管理していけば問題ありません。

もし、父親の認知症が進行してしまい意志判断能力が欠如してしまっても、子どもたちが財産の管理権や処分権を有しているため、自由に建て替えや修繕、売却などをすることができます。

家族信託には、「この資産からえられる利益をだれにわたす」といった指定もできるので、同時に遺書としての効力も。事前に取り決めておくことで、認知症になって資産の分割で兄弟姉妹・親族間でもめる危険性も軽減できるのです。

このまま放置するのはあまりにもハイリスク

もし、このまま何もせずに父親が認知症で意志判断能力を失ってしまったら。そのときは、残念ですが、家族でも父親の代行として契約行為はできなくなります。あたしく入居希望者がいたとしても、父親名義の物件ですから契約主体はあくまでも父親本人。家族が代わりに法律行為を遂行することはできないのです。

また、いずれおとずれる物件の大規模修繕や改築、建て替え、売却といった行為も、名義人本人の意志がなければできません。このまま父親が認知症になってしまったら、何かと制約の多い成年後見人を立てるしかないでしょう。

しかし、まだ父親に判断能力があるうちに、家族支度でいろいろなことを取り決めておけばそうしたリスクを避けることができます。家族信託をうけた受託者(長男・長女)は、委託者(父)が利益をえるための行為が認められていますから、アパートを売って生活費にあてるも自由ですし、修繕して入居率を高めるのも自由です。

あらかじめ管理処分権限を子どもたちにわけておくことで、万一のときにでも、スムースに物件の運営を移行することができます。

事例から学ぶ
カンタン家族信託
司法書士

親が認知症になり資産運用を引き継ぎたい、二次相続以降を自分で細かく決めておきたいなど、家族信託を最大限活用するための事例を集めました。