財産である建物を建て直す場合(相続対策)

相続対策にはさまざまな方法があります。所有している建物の建て直しもそのひとつです。

相続税対策の基本は「相続財産を減らしておくこと」なので、金融機関にある預貯金を物件の建て直しに使うことで、預貯金から生じる相続税を減らすことができるのです。

建て直した物件の相続税評価額は変わらないので、建て直しは建物を新しくしつつ相続税を抑えられる理想的な方法です。

しかし、物件の建て直しには時間がかかります。そのため、物件の所有者が高齢であった場合には建て直しが完了する前に認知症などで十分な判断能力を失ってしまう可能性があります。

測量や建物の取り壊し、銀行からの資金の借り入れや賃貸契約などができなくなるため、建て直し計画がストップしてしまう可能性があるのです。しかし、家族信託を有効活用すれば、そうした心配なく相続対策としての物件の建て直しができます。

相談ケースの説明

相談者であるBさんの90歳になる母は、中古アパートを所有しています。Bさんは相続対策のために、その中古アパートを取り壊して新しくマンションを建てる計画を考えています。

しかし、立て直し計画が順調に進んだとしても建物が完成するまでは少なくとも1年半はかかります。請負契約を締結したあとには測量や建物の取り壊し、賃貸契約などをしなくてはいけませんが、母は高齢なのでその間に病気で入院したり、認知症になったりする可能性は大いに考えられるのです。

所有権を持つ母が管理できなくなれば、建物の取り壊しや建て替え、資金の借り入れなどについて家庭裁判所の許可が降りず、立て直し計画が中断してしまいます。

解決策

家族信託を利用すれば、息子が母の代わりに計画を進められる

このケースにおいては、母を委託者兼受益者、受託者を息子として古いアパートの管理と建て替えを目的とした信託契約を結びました。

こうしておけば、母が認知症や病気で古いマンションの管理や意思決定が難しくなったときでも、母に代わって息子が建物の取り壊しや建築に関する契約・賃貸契約を結ぶことが可能となるのです。

この場合、受託者である息子が信託契約や不動産移転登記を行うことで、引渡しや借り入れの際のリスクを回避することができます。

建て直しやリフォームによる相続対策について

物件の建て直しは、相続対策としてはとても有効な方法です。相続の開始前に建て直し・リフォーム代金を支払えば、相続税の対象となる財産を大幅に減らすことができます。しかも、建物を新しくしても固定資産税の評価額が上がらないので、相続財産全体で見れば評価額は下がり、大幅な節税が可能なのです。

しかし、建て直しやリフォームをすれば必ず節税ができるとは限りません。節税効果を発揮できる建て直しやリフォームをするには、床面積に気をつける必要があります。

増築などを行って床面積が広がってしまうと、固定資産税の評価額が上がってしまい、逆に相続税が増えてしまいます。床面積はそのままで、屋内の設備を改良したり、内装を整えたりすれば相続税を増やさず、なおかつ建物の価値を上げることができるのです。

相続対策として建て替えやリフォームを行う際には、増築などで土地面積を広げずに内装や設備を充実させるようにするのがよいでしょう。

また、建て直しやリフォームを用いた相続税対策としては、資金をあらかじめ生前贈与するという方法もあります。住宅資金の非課税枠を利用できれば、相続税を減らしつつ、同時に贈与税の課税額も減らせます。ただし、この非課税枠は将来的に引き下げられるため、資金が非課税枠の範囲内かどうか確認する必要があります。

事例から学ぶ
カンタン家族信託
司法書士

親が認知症になり資産運用を引き継ぎたい、二次相続以降を自分で細かく決めておきたいなど、家族信託を最大限活用するための事例を集めました。