認知症になったら自宅を売却して施設への入所費用に使う場合

認知症になってしまったら、施設への入所が避けられないケースもでてきます。施設の入所費用は思いのほか高額ですから、居住人のいなくなった自宅などを処分して入所費用にまわしたいところ。

ここでは、「自宅を売って入所費用にあてたいが、なにかいい対策はないか」という相談事例をもとに、解決策をみていきましょう。

相談ケースの説明

相談者は不動産として自宅を所有している、高齢者。2人の息子がいるが、妻はすでに他界していて現在は1人暮らし。まだその兆しはないが、今後、認知症になってしまったら自宅を売却して施設への入居費用にあてようと息子たちと相談している。

しかし、具体的にはどのような方法で売却するのがいいのかよくわからないので、教えてほしい。

認知症に関する相談ケース3-1

解決策

成年後見制度か家族信託か

父親が将来的に認知症となった場合、通常、適用されるのは成年後見制度です。家庭裁判所に、長男、もしくは次男を成年後見人の候補者として申し立てます。

仮に、長男を候補者とし、認められて成年後見人なったとしましょう。次に、長男は家裁に自宅の売却許可を申請します。家裁に申請が認められれば、自宅が売却でき、入所費用を工面できる、という流れです。

ですが、息子が成年後見人に選ばれる確証はありませんし、売却許可が下りない可能性もあります。すべては家庭裁判所の判断しだいなので、どうしても将来の不透明感はぬぐえません。

そこで、もうひとつの解決策として知っておきたいのが、家族信託。家族信託であれば、成年後見制度を利用しなくても自宅を売却して、入所費用にあてることができるのです。

認知症に関する相談ケース3-2

家族信託は遺言としての機能もある

たとえば、長男と家族信託契約をし、自宅の管理・運用を任せたとします。やがて、父親が認知症になり、施設への入所費用が必要になったとき、長男は自由に自宅を売却することができます。成年後見制度のように、家裁など第三者機関の判断をあおぐ必要はまったくありません。

成年後見制度では、後見人の選定に最低でも1~2か月は要しますが、家族信託は契約を結んだその日から効力が生まれます。不動産売却はタイミングが命ですから、すぐに自宅を売りたくても後見人の選定に時間がかかったり、売却許可がなかなか下りなかったりすると、売りどきを逃すリスクも生まれるでしょう。

成年後見人は1年に1度、財産目録を作成して裁判所へ提出する義務がありますが、もちろん、家族信託にはそんな負担は皆無。また、父親が亡くなったあとの財産分与も、長男6割・次男4割など、家族信託で取り決めることも可能です。つまり、遺書しての機能もあるわけです。

長男への売却や譲渡・贈与ではなく、信託であるため税金が発生しないのも家族信託のメリットだといえます。

事例から学ぶ
カンタン家族信託
司法書士

親が認知症になり資産運用を引き継ぎたい、二次相続以降を自分で細かく決めておきたいなど、家族信託を最大限活用するための事例を集めました。